2004年4月24日

手術直前

 その時の私はいろいろなことがいっぺんにあって、陣痛室に移ってからは時計はほとんど見ていなかった。だからよく覚えていないのだけど、手術は7時半ごろからだったような気がする。

 車椅子で隣の部屋から移動したものの、手術台に乗るのは看護婦さんの手に支えられながら自分の足で。ほぼすっぱだかの状態で台を上るのは、さすがに変な感じ。台に横たわると目の前に天井のよくテレビとかで見る手術室のライト。「あー、私ってやっぱり手術されるのねー…」なんて(笑)、少々恐怖感に襲われる。
 そして、一度はずした心電図だか血圧だかの(いまだによく分かっていない)機械を指につける(洗濯バサミのあまりきつくない版みたいなもので人差し指をはさむ)。点滴もひとつは終わりということで(多分ウテメリンの方)、両腕にさしてある点滴用の管は2つの必要性はなくなった。前から刺さっていたほうの点滴をどうするか、みたいな話になって、先生は「なんかに使えるかもしれないから」と言って残したそうだったんだけど、私が「痛いですー」と言うと「じゃぁ取っちゃって(←看護婦さんに向かって)」とあっさり。あまりにあっさり過ぎて逆に「え?いいの?」って感じでした(笑)
 点滴をひとつ分外し、まずは麻酔を打つことに。
 背中を先生の方に向けて体育すわりをするように丸まる体制にさせられる。私が体勢を崩さないように看護婦さんが、ガシッ、と私の体を押さえる。「ちょっとつめたいですよー」という先生の声の後、背中に消毒液を塗られる。かなり広い範囲に塗っているようだった。その後注射をされるような感覚があった。すべて背中の方で行われていたので何をどうされたのか詳しくは分からなかったが、とにかく麻酔はうたれたようだ。
 「だんだん足の方からじわーっと熱くなる感じになりますから」という先生の言葉どおり、ちょっとすると腰から半分が熱く…というよりもあったかくなってくるような感じになってきた。しびれるというのに近い、なんともいえない変な感覚。ドキドキしてそれだけで息が苦しくなるような気がしたが、深呼吸してると平気になってきた。
 そのあたりで内線電話が鳴った。電話に出て戻ってきた看護婦さんはその場にいる先生(副院長)に「院長からです。麻酔はもう効いたか、って。」。私はそこで初めて院長先生も来ることを知った。
 「これは冷たいですか?」と麻酔が効いた一帯に先生は何度かコットンに水を含ませたような感じのものを当ててくる。う~ん、なんだか冷たいのは変わらないような…。私の反応が微妙だったので先生は「でもこれは痛くないでしょ?」と何かでお腹のあたりを触った。それは確かに痛くなかった。「はい」というと先生はそれで麻酔が効いたと判断したようだ。その頃には院長先生の姿もあった。

 手術の様子が私に見えないように、ついたてみたいなのを胸のあたりで立てられた。これでお腹の方は全然見えなくなった。(腰椎麻酔で半身麻酔だったので意識ははっきりしてるしお腹切ってるとことか見えたらやだもんね^-^;)
 次に鼻に酸素吸入のチューブをつけられる。「苦しくないですか?」と聞かれたので、その時なんとなく息苦しい感じもした私は、少し酸素量をあげてもらった。

 頭の上の方には看護婦さん。何かあれば彼女に言えばいい。
 大丈夫。
 「頑張りましょうね」
 院長先生が穏やかに声をかけてくれた。少しホッとできた。


「始めます」
副院長先生の声で手術は始まった。